Wowee Zowee !

わーうぃーぞーうぃー!

偽悪的なふるまいの間から

愛してやまないミヒャエル・エンデの著作の中でも特に僕は『鏡のなかの鏡』を崇拝しているのだけれども、その中に「事務所がひけて、魚の眼をした男は」という一編が収録されている。その物語で最後に唐突に現れる「海だ」は僕の体に電流を流した経験として、今もなお色鮮やかに眼前に広がっている。本当に素晴らしく、あまりに美しい一節だと思う。この時から、「海」は僕にとって真理の象徴のうちの一つとなった。僕の欠片を根こそぎ飲み込んだあの日を過ぎてなお、である。

オレらは肉の歩く朝

オレらは肉の歩く朝


SSW前野健太の4枚目になるアルバム『オレらは肉の歩く朝』には「興味があるの」というとんでもない名曲が収録されている。「君の髪を撫でていると 僕は君のお父さんか君の子供にでもなったみたい」「君の生きてることに興味があるの」僕はこれは愛そのものだろうと思った。この曲の最後で彼は「興味があるの 今日海が見たいの」と韻を踏む。本人はダジャレだと言ってうそぶいているが、僕にとっては「海」は真理を語りうる存在だから、どうしても愛と真理が並ぶ様をそこに見てしまう。もちろんダジャレだというのは本当なのだろう。ただ同時に彼は大まじめにうたっているとも語っている。作品全編がそんな感じだ。そう、この作品は一枚かけて大きな愛を鳴らしながらどこまでもナンセンスで偽悪的なふるまいをちりばめた最高にカッコ悪くて最高にクールなアルバムなのだ。「父親の遺産を使って 初めてピンサロに行った(略) どういう場所だか分かってるよね 時間が短いから脱いで」こんな歌いだしの生命賛歌があるんだぜ。まったく最高だよ。もちろん、キャリアを通じてそうだともいえる。こんなにキザで美しい照れ隠しを継続できる存在が他にあるだろうか。
 
  
ちなみに「興味があるの」のPVは宮城県の七が浜で撮影されている。七が浜には幼いころに一度だけ足を運んだことがある。クレイジーでやさしい人たちに出会った記憶が残っている。
 


プロデュースはジム・オルーク。一聴してそれとわかるプロダクションは流石だ。