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サニーデイ・サービス / サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービスサニーデイ・サービス
曽我部恵一 サニーデイ・サービス

ミディ 1997-10-22
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個人的なことをあげればやはり思想と結びついた『東京』に軍配を上げざるをえないが、恐らく本作がバンドとしてのサニーデイ・サービスとしては最高傑作であろう。

具体的な地名、肉感的なものから離れた揺らぎとまどろみの心象風景、幽玄な迷宮。行き先のない旅とモラトリアム、あるいはノスタルジアの中で生き続けようとする美意識。『東京』において「誰にでもあるはずの、他の誰かの映像的記憶と心情の移ろい」を表現しきった彼らは、ついに他者へ寄り添いもしない、安易な同調と共感を拒み続ける孤高の世界を作り上げた。そしてこれを聴く者は、同時に自らのうちにいつの間に抱えていたはずの、そして場合によっては気付かぬままに一生を終える可能性が高いその「世界」の扉が、音を立てるのを聞くのである。4作目にしてバンド名を冠し、随所にレジェンドへのリスペクトを忍ばせたその姿からは自信と充実感が伝わってくる。
 

全曲名曲。オープナー「Baby Blue」はこの国のポピュラーミュージック屈指の美しさである。こんな風に「映画に行かないか」を言えたらどんなにか素敵だろう、と聴くたびに思う。「雨」が全体の幻想感をもっともよくリプリゼントしているだろうか。「そして風が吹く」も秀逸だ。苛立ちと諦念を誰も傷付けることなく、誰のせいにするでもなく景色に溶かす様には不健康な美しさが宿るし、「旅の手帖」における「誰かはずっと上機嫌で 誰かはもっと悲しそうな顔」も白眉だ。このような形で見えていない時のこと、見えない場所のことを表現するのは並大抵のことではない。旅の手帖に君の名前を書き込んでポケットに忍ばせた男はどちらなのだろう。きっと、僕が悲しそうなときは君は上機嫌で、君が悲しそうなときは、僕は上機嫌なのだろう。人の生き死にというのはそういうものなんじゃないかと思う。
 

出口の見えない憂鬱な満足感が高みに到達する最終曲「bye bye blackbird」における「いつも君は 僕を迷わせては 赤い舌を出して逃げてゆくんだ」この美しいラインを人生の中でリアルなものとして初めて眼前で展開された梅雨の入口に、僕はあと2年は絶対に死なないと誓ったのであった。